UD道場 2022年9月12日

高校生と、ユニバーサルデザインについて話そう。

7月のある日、ブライト宛てに高校生の方から一本の電話が入りました。

話を聞いてみると、ユニバーサルデザイン(以下:UD)についてインタビューができないか、とのこと。なんでも、高校に「総合的な探究の時間」という授業があり、UDをテーマにしたいと思ったそうで、二つ返事でインタビューを快諾させていただきました。

未来を担う高校生の役に立てるなんて!楽しそう!

 

ユニバーサルデザイン(UD)とは:

「年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、製品や建物・環境をデザインする」という考え方。弊社・ブライトはUDを用いて、できるだけ多くの方に情報が伝わるよう邁進している会社です。

 

というわけであれよあれよとインタビュー当日。今回のブログではその日の会話からかいつまんで紹介しようと思います。連絡をくれたのは群馬県立高崎北高校のKさん。ブライトからは南條が担当させていただきました(掲載許可取得済みです)。

イラスト:オンラインMTGにてインタビューを行う様子。画面の向こうには高校生のKさん
当日はオンラインMTGにてインタビューを行いました

文・イラスト:南條

 

▼ユニバーサルデザインに興味を持ったきっかけは”左利きだったこと”

 

南條:今日はよろしくお願いします。
はじめから逆インタビューみたいになってしまいますが、そもそも、KさんはなんでUDについて調べようと思ったんですか?

Kさん:私は左利きなんですけど、小学校の時に友だちから「はさみを貸して欲しい」って言われたんです。でも自分が持っているのは左利き用のはさみで…「ごめん、違う子から借りて」みたいな感じになって、申し訳なくなっちゃったんですよ。

それで図書館で調べていたら両利き用のはさみの存在を知って、お母さんに買ってもらったことがUDを知ったきっかけです。

南條:小学生のときにもうUDを知っていたんですね!

 

実は通常のはさみは”右利き用”。このはさみを左手で扱うとほとんどモノを切ることができません。世の中のいろんなモノが右利き向きに設計されていたりします。ふだん使っている駅の改札なんかも…

 

Kさん:それからUDってはさみだけなのかなと思ったらいろいろ気になり始めて…「シャンプーの容器ってUDなんだ!」とか。

南條:すでにすごい詳しい。

Kさん:それで、今回探究の授業でなにを調べよう、と思った時に自然とUDについて考えようと思いました。

イラスト:シャンプーの容器に縦一列に並んだ凹凸が、ボディーソープの容器に垂直方向に一本の凹凸がある。リンスの容器には凹凸がない

視覚不自由な方がシャンプーやリンスを見分けられるよう、ボトルには区別できる凹凸がついています

 

誕生日に手話の辞典を買ってもらったり、独学で点字を学んだりとかなり探究心の強いKさん。UD界の希望の星です。

KさんはUDについて調べていく中で、まわりの高校生中心に「UDのことを知っているか」というアンケートを取られたそうです。気になる!そのアンケート。

 

南條:結果はどうでしたか?

Kさん:はい、「UDを知っている」と答えた方が85%でした。

南條:え、思っていた以上に高い!みんなどこでUDを知るんですかね。

Kさん:どこだろう…でも、家庭科の授業で、バリアフリーと一緒にUDについて記載があるんです。

 

いまは授業でユニバーサルデザインについて触れる機会があるそうです(じゃあUDを知らない15%のひとはどうしたんだという疑問も湧きますが、まあ授業ってそういうものですよね)。

ブライトはUDがまだ聞き馴染みのない20年近く前に創業した会社。当時を思うと、これだけ若年層に認識されているUDの未来は明るいな、と少し強い気持ちになりました。

 

▼ユニバーサルデザインとSDGsの高い親和性

 

話はKさんが知りたいといっていた「これからUDがどうなっていくか」というテーマへ。

 

南條:KさんはこれからUDはどうなっていくと思いますか?

Kさん:UDはもっと広まっていくんじゃないかなと…高齢化も進んでいるし、昔より全員平等という考え方も広がってきているので。

南條:おぉ、同感です(笑)。

Kさんのいう通り高齢化も進んでいるし、日本の話でいうと外国人の方とか、日本語が不自由な方の流入も増えている。これからどんどんより必要性、重要性が高まっていくんじゃないかなと思っています。

Kさん:はい。

南條:で、それを後押しするのがSDGs、です。…なんとなく聞いたことありますかね。

Kさん:はい、家庭科でやりました(笑)。

南條:家庭科すごいなー!

 

SDGs(持続可能な開発目標)とは:
近年よく耳にするSDGsは、世界を変えるために2030年までにこれらを持続的に達成しようよ、とされる国際目標。「誰一人取り残さない」という理念もあり、UDとの親和性も高い考え方です。

 

 

画像:SDGsの17項目が並んでいる

SDGsの17項目(外務省webサイトより引用)

 

南條:少し前だと、例えば「環境に配慮されていないと国や自治体は購入しませんよ」というグリーン購入法という法律が生まれ、そこで環境配慮が促進されていきました。

同じようにSDGsに配慮されていないと…という流れに今はなってきていますね。国や企業が率先して推進していっています。…ストローとかも紙になってたりしますよね。

Kさん:紙ストロー、慣れないですよね。

南條:慣れないですよね、あの口当たり…!

南條:で、UDは広がっていくと思うんですけど、遠い将来には「ユニバーサルデザイン」という言葉はなくなるんじゃないかなと、個人的には思っています。

要は、もうそれが当たり前になっていく。当たり前のようにいろんな障害を持った方がいるし、いろんな国の方がいるし、いろんな性的指向を持った方がいる。すべてが地続きになるイメージですね。

そうなると最終的にはUDという概念がなくなっていくこと、が(簡単ではないですが)理想なんじゃないかな、目指す未来なのかなと思います。

 

▼偏見についてと、高校生はいま何に興味があるのか、という話

 

話にあがった”性的指向”というキーワードから、話題はさまざまな偏見について移ります。

 

Kさん:私はLGBTにも興味があるんですが、日本はそういったものが(偏見、理解のうえで)遅れているなー、と思っています。

南條:そうですね、LGBTについて、今の若い世代の人たちのほうが理解が進んでいるのかな、とは思っているんですけど、感じることはありますか?

 

LGBTとは:
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルと、トランスジェンダー(性自認が生まれた時の身体的性別と一致しない状態にある人)の各単語の頭文字を組み合わせた表現。

 

Kさん:TikTokとかを見ていると女性同士で付き合っていることをオープンにしていたりするので、若い世代の方が自然と受け入れられているかもしれません。

南條:そうか、TikTok!
…話は逸れるんですが、いまの高校生が使うSNSってTikTokがメインになるんですか?

Kさん:自分はInstagramですかね。Twitterはやるけど、情報を見るだけ、という感じです。でも、結構使ってるひとはいるかもしれません。

 

TikTok、未知すぎて距離を取っていたのですが、情報発信をする側に身を置く人間としてもう少し把握しておかなくてはな、と感じさせます。

 

Kさん:LGBTだけでなく、血液型での性格に対する偏見とか。

南條:あー、血液型に対する思い込み、ありますよね!

Kさん:A型だから几帳面とか…そういう偏見の一つ一つをなくしていくことでLGBTとかも、包み隠さず生きていけるような、将来”生きていやすい”世界に繋がるのかな、と思っています。

そうやって少しずつ自分から変わっていけば、まわりも少しずつ変わっていくかなあと。

南條:めちゃめちゃしっかりしていますね…メモしておこう…。

 

▼ユニバーサルデザインがもっと活用されるためにできることって?

 

最後に、事前にKさんから質問をいただいていた「UDがもっと活用されるにはどうしていく必要があるのか」についてふたりで話しました。

 

南條:むずかしい問いですよね。Kさんはどうしていくのがいいと思いますか?

Kさん:知らない人に伝えていくことから始めなきゃいけないかなと思います。ユニバーサルデザインという名前だけ知っているひともいれば、普段UDに触れているのに知らない、というひともいると思うんです。まずは「これがUDなんだよ」と伝えていくことが大事なんじゃないかと思っています。

南條:うんうん、私も今まさにKさんが言ったことが大切なんじゃないかなと考えています。

段階があると思うんです。最初に自分が知ること、さっきの家庭科の授業でもいいですし、UDというものをまず知って、次に誰かと共有して消化する、最終的には身近なところからでもいいので行動すること。

図説:UDを知る、誰かと共有する、行動するの3ステップ

 

南條:Kさんがこの授業のために周りにアンケートをとっていたじゃないですか。それによってはじめてUDを意識したひともいるはずで、いまKさんがとっている行動がまさにUDの考えを広めていくことだと私は思います。

Kさん:はい!

南條:それが個人でできることですし、一方で国が制度で動かせることも多いんです。
例えば先ほど話したグリーン購入法もそうですし、あとは手話言語条例とか…。

Kさん:あ、聞いたことあります。

 

手話言語条例とは:
手話を一つの言語として認める、という条例。2022年8月現在、34都道府県により採択されています。

 

南條:そのようにして国から企業、企業から個人へ広まって根付いていくことも多いんですね。
国の動きに対してどう働きかければいいか、となると難しいんですけど、ひとりひとりが声を上げていくことも大事ですし、企業でできることもあります。ブライトなんかはUDを用いて多くの方に情報が届くようにがんばっている、わけです。

そういうそれぞれの立場でできることをやっていくことが大切なのかな、と思います。

 

あまりにKさんがしっかりしているために、こちらから伝えていくというよりは情報交換のようになったインタビュー。私自身もKさんの意見から学ぶことがとても多かった1時間でした。

 

執筆者:南條 投稿者:南條 岳
株式会社ブライト 企画課課長 ユニバーサルデザインコーディネーター
埼玉に生まれ、東京、大阪、福岡、京都、神奈川などで幼少期を過ごす。子ども写真スタジオでのカメラマンを経て2012年ブライトへ入社。外部でライター、イラストレーターとしても活動し、「わかりやすい編集」を得意とする。『高校生クイズ』が好き。
ここがUD

Kさんはこのあと授業の中で身近なモノの不便さを考え、UD化していきたいそうです。冬には中間発表を行うとのこと、とても楽しみですね。

ブライト一同、応援しています!